そういえば腹帯。ホントは不要なものだったらしいけど私には感謝しかない。

 手術が終わって麻酔から覚めた私のお腹。腹帯が巻かれておりました。



「腹帯巻きたいですか?」とも聞かれた覚えはないし「目が覚めたらあなたのお腹には腹帯が巻かれています」と事前通告されていたわけでもないし、「ぜひ術後は腹帯を巻きたいです」と懇願してもいなければ「すきです腹帯」と告げてもいない。



でも腹帯を巻かれていたんですよ。全身麻酔で縦15㎝に切られた傷跡が優しく包み込まれておりました。子宮筋腫に限らず、開腹手術をした患者全員の術後ケアの一環として巻かれるもんだと思いすんなりと受け入れておりましたが、それは私の思い違いだったみたいです。



日を追うごとに私の腹帯姿に対して変な視線が刺さる感じがし、何ともいえないビミョーな空気が漂ってきて・・・・



なぜわたし?





「ん?腹帯?」「あれ?腹帯してる・・・」「この腹帯、keme.さんのですか?」「腹帯・・・したいって言ったんですか?」「この腹帯・・どのナースが巻きました?」



えーっと、もう一度言いますね。「ぜひ術後は腹帯を巻きたいです」と懇願してもいなければ「すきです腹帯」と告げてもいない。たかが腹帯じゃないですか?なのに何故腹帯ひとつで看護師たちが若干ザワザワするのでしょう・・。手術後目が覚めたらこのような姿でした。事前に何も問われておりませんし、巻きたい希望も出してません・・・・というような内容を、腰を低くした感じで言ってみました。なんとなーくワタクシめが院内の規律を乱しているかのような空気感が漂ってきた感じがしたので。



「あー、〇〇先生(私の主治医)って腹帯好きなんですよねー。先生の患者さん、よく巻かれるんですよー」とあっけなくリターンされてしまう。だったら何故私の腹帯にみんなして疑問を抱くんのかしら?私も腹帯巻きたがりの先生の担当患者よ・・



私がなぜ腹帯を巻いていたかが解明されると「了解でーす」と言い残してナースステーションに走っていき、A4サイズの用紙をひらひらとさせながらすぐに戻ってきた看護師さん。同意書を持ってきた。ようは同意書ありきの腹帯が勝手に巻かれていたのでざわついていたようなんですが、腹帯好きの先生の患者なら「ああまたか」くらいで済まないのかしら。



でも腹帯を使うのに同意書?全身麻酔を使う事に対しての同意書はわかる。手術するにも同意書に一筆書かせておかないととんでもない事になるからそれもわかる。いずれも理解できますよ。だけど腹帯使用って同意書が必要なレベルなんでしょうか。いまだに謎な部分です。



同意の上で巻かなくてはいけなかった腹帯の同意書。退院する日がすぐそこに近づいた日に「今さらなんだけど、えへへ」という感じで馴染みの看護師さんが差し出してきました。まあ、巻いてもらって非常に助かったと感じていた腹帯なので、後出しされた同意書でもゴネずにサラサラとしましたよ、サイン。



看護師さんのいう事には、今は巻かないのがトレンドらしい。だから「〇〇先生って腹帯好きなんですよねー」という表現になったようで。だったら「また独断で腹帯巻きやがったなアイツ(〇〇先生)は」と思って頂きたかった。



もしも担当医が「腹帯なんて迷信」と最先端の情報にアップデートしていたら・・私は腹帯という素敵なアイテムには出会っていなかったかもしれない。でもいると思うんですよ腹帯。仮にエビデンスなしといわれても、守られてる感半端なかったんですけど。腹帯巻いてる時の傷の具合およびメンタルは、圧倒的に巻いてる時のほうが私の傷もココロもすこぶる穏やかだったんですよ。ただ「手術(費用)に含まれている」という程度のやつなので、たぶん簡易的なものなのでろうと思われましたが。楽天やAmazonで販売している商品としての腹帯と比べると、かなりちゃちなシンプルな腹帯。



そんなちゃちなシンプルでも超絶頼もしかった腹帯とは、なくちゃ困ると言いつつも術後2週間経ったくらいにおさらばしました。腹帯を外した時に傷口の「ジィィィィン」とする感じが出なくなったのと、そのあたりからちょいちょい巻くのを忘れて行動していたので、もうつけなくてもいいかなぁと。あとゴムの部分ものびたのか、お腹から胸のほうにずり上がりだしたので面倒になったというのも理由のひとつ。耐久日数過ぎたんでしょうね。



腹帯のことを調べた時に「腹帯にエビデンスなし」という記事を見かけたけど、「1か月は巻いておけ」だの「2か月は続けて」だのという記事も同様に見かけました。ずり上がってくる腹帯でもやっぱりつけておくべきだったかしらね。今さらですが。



余談ですが、T字帯も時と場合と病院によっては過去のものになっているご様子。30代の時に子宮筋腫の手術をした友人は「T字帯がイチバンの屈辱だった」と言いながら、自分の古い情報と経験でT字帯の呪いをかけてきました。「結構(メンタルに)くるぞ」と。「腹をくくれ」と。でも残念時代は令和。腹帯は使ったけれどT字帯は使わなかった。



そんなヤングのココロに爪痕残すT字帯を、実はホントのちょっとだけ装着してみたかった私。だってこんな時じゃないと正々堂々と体験できない代物ですよ。でも看護師さんに「いまT字帯って使わないんですよぉ~」と言われた時、微妙に少しだけホッとしました。(チャンスを失った感も少しだけありましたけどね)事前に張り切って持参したT字帯は、退院後に我が家の愛犬のオシッコ拭きとして使われて処分されました。



きっとこの先また手術する日が来たとしても、T字帯は使わないんだろうな。未来じゃ医療現場も下着業界も更に進歩してるだろうから、T字帯は古き良き時代の産物と化すんでしょうね。それでもなんでまだ売っているのだろう。誰が使っているのだろう。ドラッグストアでも普通に販売してるので、どこかの誰かは確実に使うのだよね?きっと。私も使ってもらってよかったんだけど。



ただ私のようにT字帯に興味津々の50代だけが手術をするわけではないので、パンツ引っ剝がされるのは仕方ないとしても、ふんどし風情の下半身で数日過ごさなければいけないのは勘弁だわー・・と思わなくてすむ環境で養生するほうが、きっと素晴らしい回復意欲が湧いてくることと存じます。だけどパンツであってもオムツであっても「はーい、ちょっとおしも見せてくださいねー♪」と他人から引っ剝がされたら、恥じらい具合はT字帯じゃなくとも湧き出てくると思うんだけどなぁ。



いずれにしても根拠がないならやめてしまおうぜという結果にたどり着いたアイテム達は、どんどんと排除されるかニューカマーにとって代わられるかで消え去っていくのだろうけど、腹帯はいると思うのよ。どう考えても。根拠がなくても安心と信頼は絶大でした。



だがしかし・・・先に述べたように「腹帯に根拠なし」を決定づける研究をやっていた病院があった。まあなんてこと。私の腹のキズを固定し、外敵(主に飼い犬)から守り抜いてくれた腹帯をしっかりとしたエビデンスで「あってもなくてもかわらない」というものにしてくれてました。



山口大学医学部附属病院の看護部の皆様が「開腹術後における腹帯着用の効果の検討」という論文を発表し、腹帯効果がなければやめてしまう方向に進めていこうじゃないかと目的を掲げ、平成17年8月から平成18年7月の期間を費やし研究していた。この研究対象になっているのは胃と大腸切除術の患者だったけど、腹帯は腹帯。やめてしまう方向では困る。



これから先、全国津々浦々の病院や先生方がどのような方針でいこうとするか、そしてどんな考えと経験値で患者を治療していくかはわかりませんが、私が生まれ変わって産婦人科医になったら腹帯マニアの女医になって「腹帯ふっかぁぁつ!」と奇声をあげて医療に従事すると思うくらいに腹帯には大変お世話になりました。



で、いつかまた病人になり、開腹手術をもう一度しなければならない事態になった日には、腹帯を懇願すると思います。「腹帯って大昔の話ですよぉ」「何ですか?腹帯って」と若いナースに鼻で笑われたら、腹帯はAmazonで買う事にします。売っていればの話だけど。



そしてなぜ腹帯に同意書が必要なのかは謎のまま。



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