退院(早く帰りたいようなまだ入院していたいような複雑な胸中でお会計)

2020年4月

子宮筋腫を摘出すべく

わが街の昭和の香り漂う老舗病院で

9日間の入院生活を送った

初めての全身麻酔

始めての開腹手術

初めての臓器摘出

初めてのウイルス

初めてづくしで始まった50代




 いい天気です。退院の日が雨でなくてよかった。




病院食
生まれて初めて魚を生臭いと感じた朝




前日にお局様センパイ看護師が新人看護師を連れ立って「お見積書(入院費用の)」「退院したらやっていい事・ダメな事」「術後回復体操のやり方」などの紙を数枚持ってきた。儀式なんだろうね・・・これよく読んでおいてください程度でいいのに。「術後回復体操のやり方」は見ながらやってくださいねとサラッと渡されたのに、なぜだか「退院したらやっていい事・ダメな事」は新人看護師による朗読会が始まった。



まだ明らかに初々しさの残るその説明に、私のココロはヒリヒリした。他人さまの夜の営みに制限かける文言を口にするのは、あなたの年齢とキャリアではまだ辛いでしょう。修学旅行先の部屋で、もしくはカラオケボックスの一室で、友達とキャーキャーとハートをまき散らしながら話す「〇〇クンとのチュー」話と、自分の母親とさほど変わらない年齢のオンナに向かって「パートナーと交わるのは〇か月を過ぎてからにして下さい」ではカテゴリが同じ話でも訳が違いすぎる。



それを嬉しそうに眺めているお局様センパイ看護師。あなたもあと少ししたら彼女のように立派になれるんだよ・・と胸の中で思い、うんうんと頷きながら聞いてあげた。たぶん自分がキャリアアップした時は「絶対に後輩にはこんなことするもんか!」と思っているかもしれないが、残念ながら結構やるの。センパイと同じことをね。人間はそういう生き物です。彼女はあなたの未来です。



朝ごはんが終ったら自分のタイミングで帰っていいとの事だったので、バカバカっと食べて、シャカシャカっと歯を磨いて、ちゃっちゃとパジャマを脱ぎ捨てた。パジャマ生活って楽だったなー。さすがに家に帰ったらひたすらパジャマってわけにもいかないから、そこだけ退院に未練ですね。



請求書お持ちしましたーと、なじみの看護師さんが来てくれた。「手術後ほんっっと辛そうだったけど、元気になりましたねー!よかった♪」と言われた。そんなに辛そうだった?と聞くと「ひどかったですよ、顔つき。ヤバかったですもん」と言い返された。ベテラン看護師が患者をヤバいというのであれば、相当私はヤバかったのだろう。じゃあ順調だと言われ、順調のはずだと思っていたアレはなんだったのだろう・・。



荷物は部屋に置いて、入院費を会計窓口で支払ったらまた戻って来るという支払いを1円たりとも取りこぼさないシステムになっていたので、会計窓口を目指して1階へ向かう。不思議と洋服に着替えた途端にヨタヨタしなくなった。パジャマ着て歯磨きしてた時は、まだ若干腰が引けてたのに。人間て不思議な生き物だなとつくづく思う。



そしていよいよ自由の身。ちゃんと支払ってきたしぃ~入院費とこれ見よがしに領収書をピラピラしながらナースステーションへ行ったら、よーし!じゃあ切りましょう!と、右の手首に巻かれていた名前と生年月日と血液型が記されたバーコードのバンド(正式名称わからず)を外してもらう。



入院当日に巻かれたときは「患者っぽーい♡」と浮かれたこのバンドは、途中から巻かれている部分が痒くてすこぶる邪魔だった。切られた瞬間、すべてから解放された感を醸し出してくれたこのバンド。次はどんなアクシデントで、どの科の入院病棟で巻かれるのだろう。その来たるべき次が、なるだけ遠い将来であるようにしなくてはね。



「皆さんそうおっしゃいます」と、バンドを切ってくれた看護師さんが言っていた。解放されたー!とか元気になったー!とかシャバにもどれるー!とか、そんな何かをひと言発してしまうらしい。初めて見る顔の看護師さんが私のバンドを切ってくれた。初めましてでさようならですねー・・と、そんな一瞬でも笑顔と優しさ全開で対応してくれる。ここの病棟の看護師さんたちには本当に感謝しかない。



高級老舗旅館のように深々と「退院おめでとうございます」のお辞儀で見送られ、病棟を後にした退院の儀。入院患者でも外来患者でもない「ただの人」になって病院を後にする。1階には診察時間外しか降りていなかったので気づかなかったが、入院した日よりも入り口の監視体制が厳重になっていた。家に帰ったら帰ったで大変だなぁと、腹切ったヨタヨタした身体でコロナ禍やっていけるのかなぁと、ため息ひとつして院内コンビニに立ち寄る。



だって食パンと昼ご飯を買ってこいと言う連絡が入ったのよ。家族から。まるでどこかに旅行でもしたかのような帰りの姿。片手にコンビニ袋。片手に入院の荷物。会計を済ませたら、見た目が一瞬にして開腹手術して退院する人ではなくなってしまった。



リニューアルした身体で帰り着いた我が家。ほんの9日前まではお腹パンパンの腹でぶで、子宮も卵巣も子宮筋腫も抱えていた。それらを全部取り除き、ピカピカで素敵な身体になって私は戻ってきた。このまま更に健康であり続けられるよう、ちゃーんと自分と向き合おうと思います。



9日間ストレスフルな病院のごはんのお陰で(上げ膳据え膳の感謝はしてます)私の退院後初のおうちごはんはインスタントラーメン。ジャンクフードは蜜の味しかしなかった。



家路についたら違う疲労困憊に襲われる。安心かな。洗濯物を洗濯機にぶち込んでひと眠り。これで私の子宮筋腫撲滅運動完了。


さて明日からどうなる事やら。

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