退院前日(開腹手術から6日後で患者でいられた最後の日のこと)


2020年4月の9日間

孤独の手術を体験し

ラスト1日になった入院生活は

子宮・卵巣・子宮筋腫を取り除き

リニューアルした

私の身体の最終チェックは

朝6:30の採血で始まる

生まれて初めてじゃなかろうか

朝の6:30に血を採られるなどどいう事




筋腫取ったからきっと貧血とはおさらばしてるはず。術後フォローの鉄剤も飲んだ。鉄入りジョアも数日間とはいえ毎日飲んだ。お昼からの診察で褒めちぎられたい。血も腹の中もすべてにおいて。まさかこの期に及んで「あと入院2日追加で」などと言われたらどうしよう。昨日の院内放送でお腹に変な力が加わっていたらどうしよう。




病院食
冷や奴に大豆の煮物で朝から大豆祭り



採血の時に「ちょっとお腹見せてー」と看護師さんに言われる。ベッドに腰かけた状態だったので「横になったほーがいーですかー?」と聞いたところ、「あ、座ったまんまでいーですよー」と返ってきたので「はーい♪」とお腹を見せてあげた。



キズ全体を見せなければ・・と、何もためらうことなくパジャマのズボンとパンツ(下着)を一緒に"パカッ"と広げてお腹を見せた。パジャマのズボンとパンツ(下着)を親指に引っ掛けてパカッと。キズの先にある、私の秘めた部分まで丸見えになるくらいに広げた。羞恥心も摘出されてる。可愛らしさもそぎ落とされた。パンツ(下着)だってGUNZE。開腹手術のキズ跡も私も、フリフリよりピラピラより綿100%の安定と優しさを選んでしまう。そして仲の良い友と温泉旅行に行くのはためらうくせに、医療従事者とはいえ年下のオンナにパンツ(下着)の中身を全力で見せつけられる勇気を入院生活で養った。



人間は成長する生き物



隣に座って私のお腹のキズをのぞき込む看護師さん。その彼女に屈託なく「順調って思って大丈夫ですかねー?」と尋ねる私。聴診器で腸の音の確認とキズ周りの腹の肉の弾力具合を触診しながらウンウンと深くうなずいてくれた。この看護師さんとはこの時間でお別れの儀式をおこなった。明日私が退院する時間帯はシフトの都合により立ち会えないとの事。よかったですね。頑張りましたねと言ってくれた。この人とは殆ど喋ることがなかった。この人は患者との距離を作り(いい意味で)やるべきことをキッチリこなして風のように去っていく人だった。



そんな彼女から「でも無理したらダメですよ。ぼちぼちです。ぼちぼちと一日一日を消化していって下さいね。それが早く元通りの生活に戻るコツですよ」とアドバイスを頂いた。ベッドの縁に私と一緒に腰かけて、ゆっくりと元の身体に戻れるように願ってくれながらアドバイスを続けてくれた。勝手にイメージしていたクールビューティーの面影はどこにも見当たらず。今思えば、この人が私の尿量と体温とキズの痛みと気持ちの変化をイチバン心配してくれていた人だった。



そんな有難いお言葉と労わりを頂戴していたにもかかわらず、術後2週間目に腹圧自爆をした私はやっぱりどこかマヌケな50代。





昼ごはん
ケンカを売られた昼ごはん



治療食対応患者ではないので、カロリーと栄養バランスがとれていればきっと大丈夫なんでしょう。私のような患者の場合は何を食べても。だけど病院食のメニューにビビンバ丼(メニュー表にはビビンバ風どんぶりとありました)を組み込む必要はあるのかなーと世の中に問いたい。あえて廊下に張り出してあるメニュー表を確認せずに、サプライズ的に毎食チャレンジしてみよう!と頑張っていた気持ちが、退院前日の昼で破壊された。



私は韓国料理をはじめ唐辛子の辛さ満載の料理全般が苦手なので、どこかの病室の誰かはバンザイしたかもしれないビビンバ丼(ビビンパ丼?)には手をつけることができなかった。もったいないとかフードロスとかこの時だけは一切考えずに、ビビンバ丼のカタチそのままで返却してしまった。ごはんの残量チェックをしていた看護師さんが、さすがにメイン料理に一切手をつけていなかったもんで「どうした?具合悪いのか?」と飛んでくる。そりゃそうだ。



違いますよ。それを食べたほうが具合が悪くなる(気分的に)から食べないんですよ。明日退院ともなると物事ハッキリ言えた。無理です。嫌いです。基本、塩・味噌・醤油で生きてます。野菜炒めでよかったと思う・・・とまでは言えなかった。うつむき加減で「どうしても無理なので残します」と伝えた。術後最初のごはん残した時の視線は厳しかったけど、体調不良ではなく好き嫌いが原因なら、一食まるまる残しても明日退院の患者は許してもらえる事を知る。よかった。しばらく好きな食べ物・嫌いな食べ物で盛りあがる。看護師さんはとんこつラーメンがお嫌いらしい。(臭いんだって)



昼ごはんが済んだら次は退院前診察。全身麻酔のお陰で、切られた事も摘出された事も縫われた事も一切知らない世界を垣間見る時が来た。今までずっと貼っていたパッドを剥がす。溶ける糸で縫合された切り口はいったいどうなっているのであろうか。



さあお腹のキズとご対面。すごい粘着力のテープで貼り付けた蜂の巣みたいな形状のパッド(ハニカム構造というのかしら?)を「一気に剥がすわよっ!」と、嬉々として先生が言う。「一気に・・」というワードを「ベリッ!と」と勝手に変換してしまい、ええっ!!と大きな声をあげてしまった。先生の言う「一気に・・」は「少しずつ。だけどゆっくりではない」の意味合いだったみたいで、私のイメージを伝えたら「そんなキズに障ることしないわよ」と言われてしまった。そうですよね・・・スミマセン。



すごい粘着力のテープもキズに当てていたパッドを剥がすのも特に痛みはなかった。剥がされた後を見たかったので、ちょっとだけ上半身・・というか首ををぐーっとあげて(検査台に寝かされていたので)キズを見ようとしたら「そういうことはやめてちょうだい」と速攻で止められた。そうですよね・・・スミマセン。



キズ跡にペタペタとテープを貼られていく。「keme.さん、このくらいの幅でこういう風に貼ってちょうだいね」とレクチャーしてくれる先生。さっき頭上げてキズのぞき込むなって言いましたよね。腹筋に力はいるからって。見えないんですよ、首ぐーってあげて見られないから。このくらいもこういう風もわかりませんよ、このままでは。それでも先生はお構いなしに「こんな感じでね、こんな風に少しずつ重ねて貼っていって・・」と、こんなを連発。



天井を見つめながらわかったふりして「はーい♡」と返事しときました。そっちがそう来るのなら、こっちもこんな感じでいいだろう。医者も患者もフワフワした感じでいたら、しっかり者の看護師さんが「テープ用意してますか?していなければ、いま使ったテープは院内セブンイレブンに売ってるから買って帰った方がいいですよ。よく帰ってネットで・・・みたいに言う方いますけど、退院したら一旦すべてが面倒くさくなりますからねー」と、締めくくってくれた。確かにそうだった。



術後良好。切られてできた15㎝のキズも、いろんなものを摘出した後の腹腔内も、どこにも問題はないので予定通りに帰ってよしと太鼓判を押される。「こんな」を連発されながら退院に向けて一気に剥がされたパッドがなくなると、お腹周りが瞬時にして無防備になった感じがしてならない。そこまで分厚いパッドというわけでもなかったけど、貼られていたパッドのあるなしはココロにも身体にも影響する。



それでもセブンイレブンには行く。申し渡されたテープを買いに行くのではない。ビビンバ丼のお陰で「お昼食べてないからパンを買って食べなきゃ生命の危機にさらされる」というもっともな理由ができたので。パンを買って食べてしまうと、病院のごはんが入らなくなるので必死で我慢していたパン。パンだ♡パンだ♡もう嬉しくて仕方なかった。あやうく傷あとテープを買う事を忘れてしまいそうだった。




サンドウィッチ
セブン♡






勢いで追加したチーズケーキまでは消化できなかったのでお預け。でも買っておいてよかった。お昼ごはんに引き続き、晩ごはんとも睨みあう事になった入院生活最後の日。もう本当に心の底から売店がセブンイレブンの病院に入院してよかったとしみじみ思った。人間から食べる楽しみを奪うのは罪です。




晩ごはん
降参




貧血も無事正常値になり鉄剤卒業。ネットでは「ヘモグロビンが正常値になったあと、念のためのプラスαの期間」も処方されると書かれていたサイトをよく見かけた気がするけど、朝6:30に採った血液がヘモグロビン値10.5になっていたので「はい!鉄剤終了!」とスパッと切られた。まあ診療方法は先生によって異なる部分だろう。しかも私は悪の根源をすべて取り除いているわけだし・・。このあたりは不安にならずとも大丈夫でしょう。それより鎮痛剤を大量に抱きしめて帰りたい。



一生懸命作ってもらっているにもかかわらず、ブチブチ言い続けた病院のごはんも明日の朝で終わり。明日の昼は自分の家でごはんが食べられるんだと感無量。ケチつけまくった病院のごはんも、なんだかんだ言いつつ楽しかったし有難かった。何もしなくても朝・昼・晩とごはんが出てくるという幸せって素敵です。



入院患者としての最後の夜は、ピロッとしたテープだけでカバーされた腹部の不安と退院できる高揚感であまり眠れず。家を9日間空けるという事になるなんて。しかもコロナ禍という前代未聞の状況で手術をするなんて。子宮筋腫と貧血を言い渡されたときは「パッと行ってチャッと取ってサッと帰ってくる」と甘い考えでいた事、大反省。



普通に健康でいられることって結構頑張らないとだめなんだなと、50にしてやっと理解する。


さあ明日退院です。



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