さようなら硬膜外麻酔(知られざると思っているのは私だけ?術後3日目の筋肉痛)

夜中、凄まじい痛みに襲われたにもかかわらず、術後3日目の目覚めは割と爽やか。もちろん硬膜外麻酔の恩恵200%で醸し出される爽やかさなので気は抜けないけど、この背中に針金みたいなやつを通して痛みを止めてくれるシステムは、一体いつからあるのだろう。その昔は点滴が役目を担っていたのかしら・・・などと思いを巡らせてみた硬膜外麻酔は、本日午後から抜かれます。



朝ごはん
まだまだしょっぱい・・



声は未だにカスカス。のどに痰が絡んでいるようないないような・・乾燥しているようなしていないような・・いつも咳払いしたい微妙な感じでそこにある。本来であれば、思い切って咳払いでも何でもできるはずなのに、やはりそこは新型コロナ。「んっ・・んっ・・」と見知らぬ誰かに配慮した可愛らしい咳払いしかできずにいる。「げへぇっっ!」と気合の入った咳き込みでのどのイガイガしたものを取り除くことができなくて。一生懸命に水で何とかしようとしてました。



この日もまたリハビリを兼ねたお買い物へ。一般外来お休みの曜日なので、ボサボサの髪も気にせずに向かえる。入院患者になるとパジャマにノーブラでも平気でうろちょろできる鋼のココロになれることを知る。自分の生活圏内にある病院だし、そこまで大都市でもないので、ここでビミョーな距離感の知り合いに合ったら一発アウトなのに。それでもマスクしてるからわかるまいと、完璧に世間を舐めてかかった状態で、まだ生々しいお腹の傷をかばいながら売店へジワジワと進む。



嬉し恥ずかしなパジャマ姿で買い物をする私の目的はただひとつ。2Lの水を買い、ひたすら身体に染み渡らせる事。麻酔から覚めた直後から、腸はグルグルと音を立てガスもしっかり放出した。ちゃんと動いているはずだけど、まだ排便までには至っていない。婦人科系での手術後は特に便秘で悩みやすいとGoogleで確認してしまったので、私も便秘の渦に引きずり込まれてしまうのではなかろうかと、この時ビビりまくっていた。一日1本の乳酸菌シロタ株だけではどうにもならなさそう。塩辛い部分はともかくとして、日々の献立については計算されつくしている料理を食べているのだから、この状態を1週間程度続けて何のお達しもなかったら私の腸はどうすればよいものか・・。飲むヨーグルトも買って来ればよかった。硬膜外麻酔が抜けるお祝いに♡と、浮かれながらクッキーとコーヒーを買い込んでる場合じゃなかった。




昼ごはん
ふと味覚が変わった瞬間の昼



そしてだんだん塩辛さに慣れてきている自分に気づく昼。相変わらず白米は残してるけど「頑張って食べてますねー」と言われるようになった。ええ、どうやら味覚がマヒしてきたみたいで食べられるようになりました・・・とは言わなかったけど、この日のお昼ごはんから「塩っ辛いっっっっっ!!!」と思わなくなってきた。私が病院食に慣れたのか、病院お抱えの栄養士さんが間違いに気づいたのか・・さあどっちでしょう。



向かいのカーテンの中で養生している人は、看護師さんから朝昼連続で「名札はつけて(食器を)戻してください」と言われていた。誰の食べる分か知らせるアレね。その名札に献立内容がついていた。きっと名前に続くその部分が欲しいのでしょう。朝も言われてたよねー・・写メ撮ればいいじゃん・・さっき友達と話してたスマホで・・・と、見えない同室の彼女に突っ込んでみた。気づいてね。名札のない食器を戻しても、誰が食べたかわからないでしょう?食事の管理もきっちりされるのよ病院てところは。私は尿量もきっちり量られたからね。身体を立て直すってそういう事よ。



私は病室でガンガンふつーにスマホで話をする人と相部屋になる率が高いみたいだ。いや風潮か?みんなそれなりに身体がヨタヨタしている身の上なので、別に聞かれてもいい話ならベッドの上で話してくれても私は構わないけど、看護師さんからひと言もの申されるくらいのボリュームみたいだったので、世間的には却下された彼女のふるまい。スマホが全世代と言ってもいいくらいに浸透した今、上質なスマホマナーは年代では語れない。私も気をつけなくちゃな・・と、カーテンで仕切られた陰からひっそりと思ってみる。



ごはんの名札に執着する彼女もブログを書いているのかしら。それともインスタグラムかな。もしかしたら思い出ノートに貼り付けたかったのかも。いずれにしても残念。たぶん名札の写真は取っていなさそうな感じがした。



さあ、いよいよ硬膜外麻酔を外す時が来た。これにて身体からぴよーんと出ていた全ての管がなくなることになる。少しずつ少しずつ、術中術後の身体を守っていてくれたもの達が取り除かれていく。線や管を徐々に外されていくこの儀式的なものは、身体が元に戻っていく証です。「嬉しい」というよりは「ほっとする」という気分に近いものが湧いてくる。昨日は手術したことを後悔した瞬間があったのに、今日は後悔のこの字も出てこない。その単純で勝手な生き物「私」は、この時「3時のおやつ」というやつに胸を躍らせていたが、その考えは甘かった。



身体に針金みたいなものを挿入されているような硬膜外麻酔。何㎝くらい身体の中に挿入されているか聞きそびれた。挿入は手術室でおこなわれても、抜き取る時は病室。無菌とか殺菌とか滅菌とか何にも考えなくていいのか?というくらいに、背中からカジュアルにぴゅーっと抜かれた。痛みも抜かれている感覚も一切なし。硬膜外麻酔を差し込まれていた跡に絆創膏(商品名で言うとバンドエイドですね)を貼られてフィニッシュ。シャワーも浴びてよいという。



動作に何の支障もなかった硬膜外麻酔の管でしたが、抜かれて少し経ったら便意がムクムクと湧いてきて慌てる。予想以上に催した便意に耐え、全身全霊でヨタヨタしながら向かうトイレまでの道のりの長い事。さすがにメインとして使わねばならないとされていたトイレまでは距離があり過ぎたので、VIP用のトイレを無断で借りた。(このVIP用トイレの話は後日改めて)



細胞レベルでは「何だか動きにくいよねー色んなのがつけられてるとさー」みたいなことを思っていたのだろうか。何からも制約を受けず、本来の姿に戻った途端に私の便意が現れた。だけど腹を縦切りしているから使えないんです腹筋は・・。そう、使えないんですよ腹筋・・・。腸のぜん動運動と気合だけで果たして便は出るものだろうか。開腹手術後初の排便は人体実験レベルの香りがする・・。



どう力を入れたらよいのか分からなくなった腹筋。便器に腰を下ろすのに命がけの身体。死に物狂いの用足し。日頃、何気なくスイっと出来ていた動作が困難になると人間の脳は焦る。中に人がいないか扉をノックして確認し、明かりをつけ、ドアを閉めカギをかけ、ズボンとパンツをおろしながら便器に腰かける。(プラス腹帯も外して台に置かなきゃいけない)たったこれだけの事に、都度地味な悲鳴をあげなきゃいけなかった数日間。改めて健康というやつを有難いと思った。



重大なミッションは、乳酸菌シロタ株と大量の水で何とか無事コンプリート。次の日以降も毎日しっかりとお通じがあったので一安心。見事に私の腸は復活。(ひとまず)



身勝手なもので、線や管のぴよーんがなくなり、便も出てスッキリ快調な身体になると、とたんにベッドにいることをヒマだと感じだす。そして今まで気が付いてなかった左ひじの擦れと痛みに気が付いた。たぶん硬膜外麻酔の効果が徐々に薄れてきてわかり始めたのかな。左ひじを軸にして起きたり体位を変えたりしていたツケがそこに。今では色素沈着となって、その部分は哀しき思い出と化している。擦れて赤くなった部分があるなんて全く気が付かなかった。そして「ああ硬膜外麻酔とはすごいものなんだなやっぱり」としみじみしていたら・・・腰から背中にかけて、突如激痛に襲われた。



初めてじゃないこの痛み。この正体わかってる。筋肉痛のひどいやつ。凄まじい筋肉痛も感じないくらいに効いていた硬膜外麻酔ということ?ものすごくバランスの悪い身体の使い方をしてしまっていたらしい私の身体が火を噴いた。



背中がパンパンに張っている。腰もパンパンに張っている。「硬膜外麻酔取れたらお風呂にはいれますからねー♡」と言われていた。温かいシャワーを浴びたら、きっとココロもカラダもほぐれるのよねと思ったけれど、この病院の入浴時間は15分。無理ですとキャンセルしてメソメソしていたら、ホットパックを持ってきてくれた看護師さん。これが素晴らしく効いた。痛みと辛さが高速で切り替わる身体を、ホットパックでほぐしてもらう。



ホットパックを勧めてくれた看護婦さん曰く、人によって(痛みが出た場合)痛いと訴えてくる部分は違うとの事。肩であったり首であったり、私のように背中が痛いと訴えてくる人も珍しくないとの事。でもなんとなく私の筋肉痛は他の人とは違い、日ごろの運動不足の賜物のような気がして何だか気恥ずかしかった。「たくさん自由に使っていいですよ」と言われたので、贅沢にバンバン使いまくって痛みと闘った。それでも晩ごはんは半泣き状態で食べる事に。



晩ごはん
またフタをオープンできないオカズが・・



記憶違いでなければ、この日のごはんがいちばんマシいちばん美味しくいただけたんじゃなかったかな。舌痛症を患って初めて食べたパイナップルは、ちょっとだけ辛かった。やっぱり果物の酸味と緑茶の渋みは難しいな。40代後半からボツボツと出てきたうちのひとつの舌痛症。ちょこちょこと食べたくないもの・食べられないものを作り出していく。まあうちの食卓で生のパイナップルが出てくるかといえばそれはもうないので、パイナップルの事は気にしないでおこう。



硬膜外麻酔が抜けるお祝いにと、ウキウキしながら購入したクッキーとコーヒーは明日へ持ち越し。何かを楽しむ余力がどこにもない。予期せぬ筋肉痛に襲われたショックと疲れでこの日は大爆睡。夜中の当直ナース巡回に初めて気が付かなかった術後3日目の夜。


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